極楽寺の家

神奈川

House in Gokurakuji

Kanagawa
2021

photo

笹の倉舍 笹倉洋平

award

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鎌倉市街地近郊にあり、小高い山々に囲まれて住宅が建ち並ぶ、のどかな生活の空気が流れる地域。山の奥へ通じる生活道路から枝分かれする路地に入ると、自然との距離が一層近づき、鳥や虫の声、風のざわめきが鳴っていたことに気づく。生活のすぐ隣に自然があるのを感じる。
こうした環境に住まう人々が無意識に共有してきた、自然と人の営みの在り方、その一帯から感じられる素朴な生活の息づかい ――。    昔から変わらずそこに流れていたかもしれない空気感に思いを馳せる。

敷地は路地のどん詰まりにあり、南北は隣家が建ち、東には崖を背負っていた。唯一西側だけ視界が抜けて、近くの連なる小山がよく見えた。

必要面積に対してややゆったりとした扇形変形地であったため、敷地の中をできるだけ自由に、居場所を探るように配置検討を進め、一つの小さな建築で敷地全体との関わりをいかに作れるかを模索した。室よりもさらに小さな単位で、居場所を置いていく。その場の断片を繋げ、一帯の息づかいに耳を傾けながら慎重に関係づけていった。こうして生まれた分節されたボリュームは、力強い自然や周辺に対して謙虚で平易な外観を与え、敷地全体を取り込むように広がった平面は、土地と建築の繋がりを強め、多様な質の外部空間を作り出し住宅に奥行きと意識の広がりを与えた。分節された屋根とボリューム構成、様々な外部空間に応答する異なる振る舞いの開口部など、日本家屋に古くから見られる特徴や、増築を繰り返した家屋にも似たある種の即興性などに重ね合わせることで、建築がより匿名的なものになり、設計者の力みや、時代にまとわりつく恣意的ななにかでは太刀打ちできない、大きな時間軸の中にある普遍性に近づこうとした。

建築の全体像は淡く滲み、そこにある生活の体験と記憶が、意識の中で人と環境を繋げていく。そんな素朴な営みの当たり前を、改めて思い出させてくれたのだった。

(『住宅建築』 2023.12より)

鎌倉市街地近郊にあり、小高い山々に囲まれて住宅が建ち並ぶ、のどかな生活の空気が流れる地域。山の奥へ通じる生活道路から枝分かれする路地に入ると、自然との距離が一層近づき、鳥や虫の声、風のざわめきが鳴っていたことに気づく。生活のすぐ隣に自然があるのを感じる。
こうした環境に住まう人々が無意識に共有してきた、自然と人の営みの在り方、その一帯から感じられる素朴な生活の息づかい ――。    昔から変わらずそこに流れていたかもしれない空気感に思いを馳せる。

敷地は路地のどん詰まりにあり、南北は隣家が建ち、東には崖を背負っていた。唯一西側だけ視界が抜けて、近くの連なる小山がよく見えた。

必要面積に対してややゆったりとした扇形変形地であったため、敷地の中をできるだけ自由に、居場所を探るように配置検討を進め、一つの小さな建築で敷地全体との関わりをいかに作れるかを模索した。室よりもさらに小さな単位で、居場所を置いていく。その場の断片を繋げ、一帯の息づかいに耳を傾けながら慎重に関係づけていった。こうして生まれた分節されたボリュームは、力強い自然や周辺に対して謙虚で平易な外観を与え、敷地全体を取り込むように広がった平面は、土地と建築の繋がりを強め、多様な質の外部空間を作り出し住宅に奥行きと意識の広がりを与えた。分節された屋根とボリューム構成、様々な外部空間に応答する異なる振る舞いの開口部など、日本家屋に古くから見られる特徴や、増築を繰り返した家屋にも似たある種の即興性などに重ね合わせることで、建築がより匿名的なものになり、設計者の力みや、時代にまとわりつく恣意的ななにかでは太刀打ちできない、大きな時間軸の中にある普遍性に近づこうとした。

建築の全体像は淡く滲み、そこにある生活の体験と記憶が、意識の中で人と環境を繋げていく。そんな素朴な営みの当たり前を、改めて思い出させてくれたのだった。

(『住宅建築』 2023.12より)